「全音ピアノピース」
ピアノを習ったことがある人は一度やどこかでお世話になっている楽譜なのではないだろうか。
好きなあの曲を1曲だけ、憧れのあの1曲だけ、挑戦したいあの1曲だけ……と、弾きたい曲を1曲単位で手軽に購入することができる全音楽譜出版社の優れたシリーズ。
mezzopianoの独断と偏見と趣味と……で1曲ずつ楽しんでいく企画(?)である。
✳︎全音ピアノピースサイト「全音ピアノピース物語」(公式) に【全音ピアノピース】の詳しい歴史が記載されています
本日の作品▷▷▷No.108. 子供の遊戯/B.ウォルフ
さぁこの「B.ウォルフ」さん、なかなかに情報が少ない。
紀伊国屋や楽天のサイトでは作曲者は「ベルンハルト・ヴォルフ(ウォルフ)」となっている。曲の構造や使用和声などからも時代的(ロマン派あたり)に合致していそうなので、おそらくこの方なのでしょう。(間違った情報を載せているとも考えにくいし)
残念ながら、なぜか?アクセスできませんでしたが、ロンドン大学のデータベース[Hofmeister ⅩⅠⅩ](音楽出版物記録のデータベース)に情報が載っているようです。検索結果で見える範囲で……“Wolff, Bernhard, Op. 44. Kinderstücke Kurze instruktive Klavierkompositionen. Spielende Kinder. No. 7. Menuett. No. 8. Türkischer Marsch……“ とあります。「Op.44(-NO.6)」は楽譜にも記載されています。曲集の6曲目のようです。
ベルンハルト・ウォルフ(ヴォルフ)/ Bernhard Wolff (1835-1906)
ドイツの出版社ヘルム&バイノフ(Helm&Baynov)のHPによると、「ドイツ人作曲家・音楽教師。ハンス・フォン・ビューローの生徒。ピアノの学校のため(ピアノ学習者のため?)に多くの作品を書いた。」とのこと。
また、ヨセフ・ピシュナの《60の練習曲》から幾つかを取り出し、彼がまとめたものが《リトル・ピシュナ 48の基礎練習曲集》という練習曲集として知られています。使ったことがある方もいるかもしれません。
さて曲を弾いてみましょう。
6/8拍子・変ロ長調。A-B-Aのシンプルな構成。
全体を通して明るく可愛らしい調子であります。Bでト短調へ転調しモヤモヤとしたときを過ごしたのち、最後に気分は晴れてAへ戻ります。
〈A〉
左手:和音の伴奏、右手:2小節にまたがるフレーズを奏でています。基本リズムは同じです。簡単ですがカクカクしないよう、なめらかに弾けるように練習すると良いと思います。あとこれは私だけかもしれませんが変ロ長調って弾きにくいですよね。ミとシにフラットがあって微妙に距離が近く、黒鍵と黒鍵は隣り合ってないくせに1つのフレーズに同居しやすい。ぼこぼこしやすい気がする。
〈B〉
Aでメロディーを奏でていたパターンが左手に。伴奏でありつつも、右手の旋律と絡み合うようにしっかりcresc.して良いと思います。pp以降息の長いcresc.があるので計算して弾きましょう。色々ありましたが4小節であっさり機嫌を直して解決。Aへ戻りましょう。
全体的にあっさりとした調子で劇的な変化はありません。盛り上がりには欠けますが、可愛らしい曲です。最後になって初めて、上行したまま下行しないメロディーが出てくるのでここは歯切れ良く解放感を持って弾きたいです。
リズムパターンに大きな変化はない分、リズムやテンポはブレないように、幼稚園のみんなでお遊戯を揃えるようにきちんと丁寧に弾きたい曲です。
“Children at Play”→「子供の遊戯」と邦題は訳されています。直訳すると「遊ぶ子供」などとも訳せるのでイメージは色々あると思います。私は先に「幼稚園のみんなでお遊戯」と書いたように、左手の規則的なリズムが先生の「ポン・ポン・ポ〜ン」という掛け声に聴こえるので、子供たちが皆でお遊戯している様子を思い浮かべながら弾きました。みんなで揃えて、上手に踊ろうとするあまり真剣になってしまい、なんだか伸び伸び踊れない……上行してはすぐに下行して、なんだか盛り上がりきれない控えめなメロディーに重ね合わせています。