by mezzopiano
今日の1曲|G.ガーシュウィン:アイ・ガット・リズム
アイ・ガット・リ〜ズム♪
アイ・ガット・ミュ〜ジック♪
きっとどこかで耳にしたことがある、このキャッチーなフレーズ。
アメリカを代表する作曲家ジョージ・ガーシュウィンと、兄である作詞家のアイラ・ガーシュウィンが中心になって制作されたミュージカル《ガール・クレイジー》の中の1曲だ。このミュージカルを下敷きに1992年に制作された《クレイジー・フォー・ユー》は大ヒット、ブロードウェイでもロングラン公演となり、日本でも劇団四季が上演している。
いわゆるディズニー「マニア」ではないのだが、東京ディズニーリゾートが大好きな私。地元に住んでいた頃は両親が年に1回連れて行ってくれたので、遠方ながら馴染みのある遊園地だった。パークのあちこちで流れる胸踊るBGMにすぐに心を奪われた。子供なりに音楽のパワーのようなものを目一杯感じて、小学生の夏休みの自由研究でディズニーリゾートを取り扱ったこともあるくらい心惹かれていた。なんとかしてかかわれないかと思い、キャストのアルバイトをしよう!と考えて千葉の大学を志望した時期もあった(笑) 就職活動では運営会社のオリエンタルランドも受験した。見事に落ちたので夢は叶わなかった。
先日久しぶりに東京ディズニーリゾートへ行った。実に7年ぶりである。入口に立ってすぐ、大好きだった音楽を耳がとらえた。懐かしさで胸がいっぱいになり、音楽を好きで、続けている原点はやっぱりディズニーリゾートなんだ……と再確認した。
ディズニー映画の曲ではないのだが、パーク内で出会い1番心に残っている曲がこの〈アイ・ガット・リズム〉だった。
今はもう上演されなくなって久しいが、ディズニーシーのブロードウェイ・ミュージック・シアターで公演していた《アンコール!》(2006年終了)という演目をご存知だろうか。
〈アイ・ガット・リズム〉〈サマータイム〉〈巴里のアメリカ人〉などガーシュウィンの代表作をはじめ、〈雨に唄えば〉〈メモリー〉〈マンボ〉など、特A級に有名なミュージカルナンバーが30分の中にぎっしり詰まったショーだ。
パーク内を歩き回り疲れた足を休めるため、両親が「30分も座れるから。雨も凌げるし。寝てもいいし。(←オイ)」と言っては列に並んでいたのである。
すっかり休憩モード、隣で寝ている妹を横目に、私はステージに釘付けになっていた。
「大都会ニューヨークの中心、タイムズスクエアへようこそ!」
次々に繰り出される素晴らしい曲の数々、躍動するダンサー。響き渡る歌声。遠くからでもよく見える笑顔。私が人生で初めて接した生のエンターテイメントだったかもしれない。自分でもちょっと変だと思う、今、思い起こして文字にしているだけで涙が流れてきました……。なんで終わっちゃったんだろう。
父親が「このショー見るだけでもパークチケット買う価値あるあるねぇ。」といつも言っていたけれど、本当にそうだ。ここが遊園地であるということを忘れてしまうような圧巻のショーだった。
観客席が暗くてよかった。ディズニーシーに来てなぜか泣いている私がいるから。思春期なので親に「感動している私」なんて見られたくない。
会場の外へ出ると母が「良かったねぇ。感動して、ちょっと涙出たねぇ。」と言った。仲間を見つけたようで少し安心したと同時に「素直に涙を見せれていいなあ。」と羨ましく思った。
どの曲も素晴らしかったが、私の心を掴んで離さなかったのが〈アイ・ガット・リズム〉だった。子供でもなんとなく聞き取れるような平易な歌詞に、一度聴いたら忘れないキャッチーなメロディー。心を動かすコード進行。(のちに「リズム・チェンジ」と呼ばれる人気のコード進行となり、この進行を使用したジャズの曲が数多く誕生する。「アイ・ガット・リズム・コード・チェンジ」→「リズム・チェンジ」と略された。)
この曲がガーシュウィンの〈アイ・ガット・リズム〉という曲であることを知るのはずっと後のことになるが…… 真っ直ぐに「音楽っていいな。ずっとずっと続けたいな。ステージに立ちたいな。」と、心に火を灯してくれた大事な曲になった。
もうここで「アンコール!」されることのない曲に想いを馳せつつ、パーク出口に向かっていると、手を繋いでいる娘がぼろぼろと泣き始めた。「楽しかった、寂しい。」と涙を流すこの子の素直さもまた、羨ましいな、と感じたのだった。
★今日の1枚
💿ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(ピアノ・ソロ版)/ソング・ブック/3つの前奏曲(デロルコ)(DENON)
「ちょっとそこのピアノで弾いてくるわ」みたいな気楽さのある演奏。すぐそばで弾いてくれているよう。バロックから現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、ジャズ・電子音楽も作曲しているデロルコの緩急ある演奏は自由で明るく、気持ち良い。