【今日の1冊】マイカパル ピアノ小品集/全音楽譜出版社

【今日の1冊】マイカパル ピアノ小品集/S.マイカパル/校訂・解説:村手静子/全音楽譜出版社


コンクールの課題曲に上ることもあるが、一般的知名度(「バッハ?聞いたことある!」のような)が低いサムイル・マイカパル。日本で出版されているマイカパルのピアノ作品集は非常に少ないのではないだろうか?
今日紹介する小品集はロシアでは広く愛用されているそうだが。(※他には《マイカパル ペダルのための20のプレリュード 作品38》が出版されているくらい?)

サムイル・マイカパル(1868-1938)は現ウクライナ・ヘルソン生まれ。ピアニストとして各地でコンサートを開催する傍ら、作曲家としても活躍し、300曲以上曲をのこしている。正直なところ日本での知名度は今ひとつだが……優れた教育者として活躍したマイカパルは子供向けに素敵な作品を多くのこしている。

さてこの曲集は選集になっていて、各々の作品集の全ての曲を網羅しているわけではなく、初級〜中級者向けに抜粋し収録されている。

「子供向け」の作品というのは、言葉を選ばずに言うと、どうも幼稚くさいというか、あまりに単純だったり、和声やリズムがワンパターンでつまらなかったり、というものも多い。

どうせ子供だからわかるまい、と先回りして決めつけて、単純化されすぎた音楽を与えてしまうのは勿体無い。柔らかな心と感性で新しい世界と出会えると良いなあ、といつも願っている。

大人が思うよりずっと、子供は有名・無名、知る・知らないに関わらず様々な音楽をありのまま受け入れることができる。そして、良くも悪くも、まるごと吸収していく。

だから、子供にだって、初歩者にだって、真に美しく、面白く、技術的には簡単なものであれ芸術作品として成り立っている作品を与えたい、というのがいち指導者である私の願い、そして指導の方針である。

本作品集は、リズムが面白いもの、響きが美しい/面白いもの、寂しさが滲むもの……個性際立つ曲が37曲も収録されている。何よりこれぞロシア(周辺含む)といわんばかりの歌うような旋律の宝庫で、初中級の曲ながら味わい深い曲が並んでいる。

収録曲〈ふとした思い Op.4〉冒頭部分。たった2段だけ弾いてみても美しさがお分かり頂けるだろう。
引用:マイカパル ピアノ小品集 p.59/全音楽譜出版社

《マイカパルピアノ作品全集》出ないかな?まずは広く色々な作品に触れて相性を……というのはよいのだが。

選集であるので、教育目的が明らかな作品、佳曲、代表曲を中心に選ばれているであろうことも承知している。ここに収録されていない曲もとても良いので……。 IMSLPには結構な数の作品が登録されているので、この曲集でピンときた方はそちらものぞいてみると良いかもしれない。

ちなみに今回紹介した楽譜は2023年現在通常入手可能。
【今日の1冊】では、2回連続で入手困難な楽譜を紹介してしまいましたので……。

ちなみにIMSLPの良し悪しは人により意見があると思いますが、私はありがたくよく使います。出会いの場です。(言い方)

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