B.バルトーク:ミクロコスモス 第1巻 BB105 Sz.107

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対象年齢
6・7歳〜
内容
いきなりユニゾンの両手奏からスタート。音域の拡大には全く配慮しておらず、どんどん新しい音が登場し色んな音域で弾く。基本的な譜読みはできている前提の教本である。10曲目からはユニゾンではなく両手を交互に使ったり、並行進行、反進行になっていたりしており曲のバリエーションが増える。ポジションの移動も開始。後半はカノン形式の曲が多く難易度が上がる。これ1冊だけ、は使いにくい。1〜6巻通して、臨時記号の譜読みの訓練、左手の演奏能力の向上、変拍子や多様なリズムへの対応に非常に効果を発揮するので併用教本として活用するのが良いと思う。
◎右手も左手も平等に演奏能力を養うことができる
◎対位法的な曲に初歩のうちから慣れておける
◎臨時記号にも初歩のうちから慣れておける
△譜読みの訓練は全く出来ないのでこれ1冊では使いにくい
△教会旋法を使った曲が多く、基本の調性感を養うのが難しい
〈項目〉
片手奏/両手奏
四分音符/二分音符/付点二分音符/全音符/付点全音符
四分休符/二分休符/全休符
♯/♭/♮
2/4 / 3/4 / 4/4 / 6/4 / 2/2 / 3/2
スラー/アクセント/タイ/リピート/legato
f/mf/sf/p/クレッシェンド(cresc.)/ディミヌエンド(dim.)
曲名難易度YouTube
曲説明・解説・コメント・練習のポイント など
6つのユニゾンの旋律
1.入門1
★4分音符の正しいカウント
2分音符・全音符のメロディーを、4分音符で正しく拍を取って弾く。2分休符も正しく。短くならないように。
6つのユニゾンの旋律
2.入門1
★フレーズをとらえる
a)・b) 互いに鏡で映したような形の旋律になっている。
メロディーの頂点がどこかを考えてフレーズをとらえよう。
6つのユニゾンの旋律
3.入門1
★フレーズをとらえる
3小節ごとのフレーズになっている。
[9]他の3つのフレーズと終いのリズムが異なる。♩♩の部分を急がないよう丁寧に弾く。
6つのユニゾンの旋律
4.入門1
★フレーズをとらえる
前半4小節のフレーズ:シ→ド→レ→ミ→ファの上行、と捉えて弾く。
後半4小節のフレーズ:ファ→ミ→レ→ドの下行、と捉えて弾く。
メロディーの上行に伴って盛り上げたり、メロディーの下行に伴って音を落ち着かせたりしよう。
6つのユニゾンの旋律
5.入門1
★フレーズをとらえる
基本的に3小節ごとのフレーズで構成されている。
[7][8]・[9][10]この2箇所のみ2小節ごとのフレーズである。3小節が続くところよりも次の息が早くやってくるので、動きがある箇所になっている。生き生きとフレーズを感じて弾くこと。
6つのユニゾンの旋律
6.入門1
★フレーズをとらえる
★休符をしっかり感じる
前半は大きく4小節のフレーズ、その後は[5][6]の2小節、[7]-[9]の3小節、の構成になっており、曲の中に細かくフレーズの動きがある。
特に[7]の4分休符はとても大事。「休符=休み」ではない(いや、休みではあるけれど!)。ただの休み、ただ拍の分だけ音を出さないのではない。なんのためにそこに静寂があるのか?をいつも考える必要がある。初歩のうちから感覚的にで良いのでその習慣をつけること。この曲では、[7]の2拍目から始まるメロディーを始めるための呼吸、準備、[5][6]の少しうろうろしたメロディーからの切り替え、の休符と考える。
7.付点音符入門1
★付点のリズム
付点のリズムを「正しく」弾くのは永遠の課題かもしれない。十分上手な人でも鋭くなりすぎたり、逆に鈍いリズムになったり、本当に正しく弾くのはとても難しい。
この曲には、付点2分音符+4分音符が登場する。いわゆる「付点リズム」と呼ばれるリズムよりも長い音符でのリズムとなるが、どれだけ早い付点リズムであっても基本はこの曲に出てくるリズムと同じである。付点リズムを曖昧に弾かないで、拍を正確に数えて演奏する習慣をつけよう。
8.反復(1)入門1
★同音連打
力を抜いて同音連打できるかがポイント。掌でしっかり支えて、腕の力を抜く。肘下を脱力しよう!とするとだらりとなりすぎる。二の腕〜肩・鎖骨がリラックスするように。
9.シンコペーション(1)入門1
★シンコペーション
タイで結ばれている音符の最後の音符は、先生がその1拍分を手で叩いてリズムを理解させる。各音符は正しい長さで弾くように。
10.両手を交互に入門1
★メロディーの模倣
★フレーズの始まり方・終わり方
使用する音階を演奏する手の位置をまず確かめる。ラ♭で黒鍵を使うので、手は少し奥に準備しておく。片方のフレーズの始まりともう一方のフレーズの終わりが重なるので、始まり方ははっきりと、終わり方は少しdim.で。
11.平行進行入門1
★ユニゾンではない両手奏
10度離れた音を両手で鳴らす。手の動きの方向は(最後の1音以外)同じなので、左右で鳴らしている音は違うが、スムーズに演奏しよう。
12.鏡影入門1
★反進行
左手と右手は鏡対照になっている。ユニゾンの曲は縦で合わせながら弾くことができるが、反進行はそうはいかないので左右が多少なりとも独立している必要がある。
13.ポジションの移動入門1
★手の位置(ポジション)の移動
初めて手の位置を移動して弾く曲。フレーズ間に移動があるので、各フレーズの始まりをより強く意識させられる。使う音域が広がるので音域による音の違いを感じられるように。
14.問いと答え入門1
★フレーズの終わり方の違い
続いてもポジション移動を含む曲。上行で終わるフレーズ、下行で終わるフレーズが交互にくる。これがそのまんま「問い」と「答え」になる。問いが上行、答えが下行。おしゃべりする時の口調を考えて弾いてみよう。
15.村の歌入門1
★手の位置(ポジション)の移動
[9]の1拍目の休符を大事に。なんとなく2拍目を弾き始めないように、きっちり1拍分数える。
16.ポジションを変えた平行進行入門1
★手の位置(ポジション)の移動
左右の音のバランスを探ってみよう。
ユニゾンではなく平行進行。左右の手の音が違うのでポジション移動の際気をつける。
17.反進行(1)入門1
★反進行
★手の位置(ポジション)の移動
16と同じく、左右の手の音が違うのでポジション移動の際気をつける。
5の指で黒鍵を弾く時にスムーズに行くように、あらかじめ手の位置を確認しておくこと。(白鍵のみを弾くときよりも手は奥に準備する。)
13.と右手のメロディーが同じだが、左手のメロディーが異なる。印象がどのように変化するかよく聴き、考えてみる。
4つのユニゾンの旋律
18.入門1
★フレーズの終わり方の違い
4つのユニゾンの旋律
19.入門1
★フレーズの終わり方の違い
4つのユニゾンの旋律
20.入門1
前半に曲の重心がある面白い曲。
[7]まで一度もシが使われず、[7]で全音符で、と堂々たる登場である。その音の後全休符を挟むので、後半がらりと雰囲気を変えるのも良い。
4つのユニゾンの旋律
21.入門1
★アクセント
アクセントを弾くときは鍵盤を上から叩きつけないように。その音を弾く瞬間、てのひらごと、腕ごと真下へ落とすような重さの掛け方を。直後は力を抜く。まずは大袈裟に手・腕を落としてみて感覚を覚えさせる。
22.模倣と対位法入門2
ここからグッと難易度が上がる。初歩から2声の課題をしっかり入れてくるのが《ミクロコスモス》の素晴らしいところであり、対して一般的にはとっつきにくいところであろう。いろんな曲が弾けるようになったとして……メロディーは確かに右手(高音域)が担うことが多いだろう。しかし、そもそも伴奏パートを演奏するにしても、左手が右手と「対等に」使えて、メロディーと同じだけ「聴けている」必要があるのである。大抵の教本では(仕方がないことだが)、左手が完全に伴奏に徹してしまい、音数が少ない。旋律を奏でることも少ない。右手と対等に聴けて、弾けて、という状態からどんどん遠ざかってしまうのである。習い始めた時は右も左も対等に「ゼロ」なのに。しばらくは支障がなくそれなりに弾けてしまうので気づかない。そしてそろそろバッハのインヴェンションを弾こうね、となったタイミングで初めて対等でないことに気づくのである……。おっと過去の自分への愚痴が長くなったぞ。
23.模倣と転回(1)入門2
2声の曲の難しいところは前述の通り左手も対等に弾けて・聴けなければならないこと。
それぞれの声部を弾き分けることに目が(耳が?)行きがちだが、縦のラインも非常に重要。横に囚われすぎずに縦のラインのハーモニーにも注意すること。
♪レベルが上がってもずっと使える2声(〜複数声部)の曲の練習方法
①1声ずつ練習する
②1声目(ピアノで弾く)と2声目(音名で歌う)で練習する。全パート交代して全通りやる。4声などになるとそれだけで練習時間が削られてメンタルも削れます。声域外の音を歌うのは難しいのでオクターブを上下に調整して歌うか、音名を正しく歌って(これは絶対)音程は最悪合っていなくて良い。難しいが効果は抜群である。全パートピアノで弾いた時にびっくりするくらい全ての声部が聴こえて悶える。歌で歌えないものはピアノでも弾けないんだ、ということがよくわかる練習。『のだめカンタービレ』でコンヴァトのマジノ先生ものだめに課題として出していた練習で、読んだ当初は同じことやってる!と興奮した。ちなみにのだめに課された課題はバッハの平均律を全曲……全曲ですよ!?この練習方法でさらってくるというもの。4声や5声の曲もあるのに。コンヴァトの学生はそれくらいやらねばならんのでしょうけど……いやはや凄まじい。
③縦のラインを意識するためテンポを落として両手で1音ずつ弾いていく。右手と左手で音価が違うところは音価の細かい方に合わせて適宜打鍵を増やす。こ、こんな音が鳴っていたなんて……と耳の穴が開く。②の練習で聴こえた音とはまた違う印象を持つはず。和声感を養い、曲の構成やフレーズの雰囲気、音のバランスを決めるのにも役立つ。
24.牧歌入門2
シンコペーションが多く、両手に長いフレーズがあり、さらにスラーの切れ目が揃っていないために各フレーズの終わり方の処理に注意する必要がある。もう一方のフレーズに釣られないように。不思議な切れ目や長いフレーズの影響か少し浮遊感がある、夢のような心地のする美しい曲。
25.模倣と転回(2)入門2
カノン形式の曲。
sf の音を合図に先行するメロディーを担当する手が交代するのが面白い。sf はわかりやすく、大袈裟にやっても良いのかも。遊び心のある曲。
26.反復(2)入門2
左右とも細かくスラーの切れ目があり、かつタイミングが異なるため注意する。
27.シンコペーション(2)入門2
音価の長さによって音の重みを変えてみると良い。例えば全音符は重さをつけて。テヌートをつけてたっぷりと響かせる。四分音符は比較的軽く、前向きに。ベッタリと弾かない。音が「長い」「短い」だけでなく、音価によって音の重さに変化をつける。
28.1オクターブ離れたカノン入門2
各々の手のフレーズの開始に注意。それぞれの手は独立して旋律を奏する必要があるので、デュナーミクがもう1方に釣られたり、変な位置にアクセントがついたりしないように弾く。
29.鏡に映った模倣入門2
右手のみに♯が登場する。
27.同様、音価の長い音には重みを持たせてよく響かせる。
30.5度下のカノン入門2
この曲から発想記号が使われる。楽典のページ等はないので、各自指導すること。(ここではModerato)
31.カノン形式の舞曲入門2
フレーズの処理、アクセントが難しい。(どちらも左右でつく位置がずれている)
まずはフレーズを正しく処理できるようになってから後でアクセントをつけるなど、2段階で取り組むと良い。
32.ドリア旋法で入門2
2声の美しい曲なので、片手ずつよくlegatoで練習してから両手で合わせよう。
33.ゆったりした踊り入門2
4分の「6拍子」。あまり見かけない拍子である。大きな2拍子と捉えて、1小節を2つに分けて考えると6拍子感が出る。楽譜には記されていないが、まずは1拍目と3拍目にアクセントをつけて練習し、拍感を身体に覚えさせると良い。
34.フリギア旋法で入門2
左手と掛け合いをするようなリズムが面白い。
右手旋律は1拍目(強拍)が休符になっている部分が多く、軽く漂う感じがある。対して左手は1拍目に長い音符が奏されることが多く、ずっしりと重みのある旋律になっている。この両手のキャラクターの違いを表現できると良い。
35.コラール入門2
前半と後半で後から入る旋律の遅れる拍の数が違うので注意する。(前半:2拍、後半:3拍遅れる)
36.自由なカノン入門2
1フレーズの終始部分が自由に扱われているカノンである。
[7]→[8]でシ→シ♭に変化して模倣されている微妙な変化を見逃さずに。
アウフタクトが初めて登場。
付録:基本練習
1)同じポジションの中で、黒鍵を交えて1〜5の指それぞれで均等に弾く練習。
2)[1][2]と[3][4]の右手、左手それぞれが鏡写し・模倣になっている。
3)反進行の練習。
4)29番で使われる調の確認。