対象年齢 |
6歳〜 |
概要 |
フェルディナント・バイエル(1803-1863)によって、ピアノの初歩者が初めの1、2年の期間で必要なことを学ぶために作られた教則本。 バイエルはオペラなどの主題を用いた曲を家庭でも気軽に演奏できるようピアノ曲に編曲し、人気を得た作曲家です。一方自作曲はほとんど演奏される機会がなく忘れ去られています。 しかしながらこの《バイエルピアノ教則本》は1880年、音楽取調掛(現在の東京藝術大学)の基礎教材となって以降、現在の日本ではなお根強い人気があり、長きにわたって使われています。 現代のピアノ教育界では「今どきバイエルなんて」と仰る先生方もいるかと思いますが、この100年以上代表的な教本であり続けた本書について、良いところ・足りないところなど探っていきたいと思います。 ★スラーの付け方に注目 ①音のまとまりごとに記したもの(弦楽器演奏におけるボウイングスラー) ②長いフレーズ全体に記されているもの の2種類を使い分けてある。 ①はバロック〜古典派的な記法であり、スラーの終わりで「切る」というよりは、フレーズ全体はレガートで弾くべきで、スラー部分はそのフレーズの中の、さらに細分化されたまとまり、と考えて弾くべきだと思う(弦楽器だとひと弓で弾く、というように)。なので、スラーの終わりの音を不自然に短く切る必要はない。 序盤は同音連打にスラーがつかないようになっているので、初心者にとっても弾きやすく配慮されている(初心者は同音連打を「なめらかに弾かなければ」と思うと力みやすい)。①のスラーの付け方は、初心者の弾きやすさの点、拍を感じる弾き方の基本・音のまとまりのパターンを学べる点でとても考えられたものになっていると思う。何もなければなんとなく1小節ごとに区切って、1234と数えただけの味気ないフレージングにもなり得てしまうので。 また、1拍目(強拍)に向かうためにアウフタクトから小節線を跨いでスラーが付けられている箇所が多く見られる。「これは強拍へ向かう助走」のつもりで弾くとリズムが生き生きしてくる。同音連打の箇所もうまく配置されているので楽譜通り自然に弾くとうまくいくだろう。 ②のスラーはロマン派的。レガートで奏することはもちろん、その長いフレーズの終わりは「終わり」であり、決して大きな音で尻餅をついたような終わり方になってはいけない。「〜です。」と話すように、音量は少し落とし、落ち着いてフレーズを終わらせよう。 1番や2番など、片手・ドレミファソだけの段階でかなり細かくスラーが使い分けられているのでしっかり守って弾く習慣を序盤からつけておくとよい。 |
おすすめ |
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曲名 | 難易度 | YouTube | |
曲説明・解説・コメント・練習のポイント など | |
1 主題と12の変奏 | 入門1 | ♫ |
使用音:(中央ドの1オクターブ上の)ドレミファソ ★右手の練習。 中央ドより1オクターブ上のドレミファソから開始。使用音は同じで、バリエーションが12個。5つの音がいっぺんに登場するので読譜指導に注意。そもそもそれほど小さい子を想定して作られた教本ではないだけに、読譜に対する考慮はされていない。 |
2 主題と8つの変奏 | 入門1 | ♫ |
使用音:ソラシドレ ★左手の練習。 1.の課題よりも少し音域が下がる。ト音記号上の音符だが、左手を使用する。バイエルではヘ音記号の導入が遅いので、音楽之友社編のものの前書きにあるように、オクターブ下げて弾くというのも手だと思う。 |
【3.〜7.】両手で「ドレミファソ」を使ったメロディーをユニゾンで弾く。右手と左手は1oct.離れてはいるが音は同じなので指の動かし方自体は単純。その分楽譜と鍵盤位置の関係を覚えることに集中し、少しずつ読譜に慣れること。3 | 入門1 | ♫ |
使用音:(中央)ドレミファソ(1oct上)ドレミファソ ★両手でユニゾン |
4 | 入門1 | ♫ |
使用音:(中央)ドレミファソ(1oct上)ドレミファソ ★両手でユニゾン ★3度跳躍 |
5 | 入門1 | ♫ |
使用音:(中央)ドレミファソ(1oct上)ドレミファソ ★両手でユニゾン ★3度跳躍 ★5度跳躍 ★[付点2分音符+4分音符]の付点リズム |
6 | 入門1 | ♫ |
使用音:(中央)ドレミファソ(1oct上)ドレミファソ ★両手でユニゾン ★5度跳躍 ★[2分音符+4分音符]の付点リズム |
7 | 入門1 | ♫ |
使用音:(中央)ドレミファソ(1oct上)ドレミファソ ★ほぼユニゾン(2つ全音符あり) ★順次進行と3度跳躍の組み合わせ |
【8.〜10.】左手は「ソ」のみだが、リズムが右手のメロディーと異なる。両手の独立に向けて第1歩目の練習。正直左手に面白みがないが、音の心配をしなくてよいので、リズムに集中して弾くことができる。左手の弾き直すタイミングに左右されず、右手のメロディーのスラーをできるだけ守って弾くこと。8 | 入門2 | |
使用音:(中央)ソ(1oct上)ドレミ(ファ)ソ ★左手と右手で異なるリズムを弾く(左手は単音の伴奏) |
9 | 入門2 | |
使用音:(中央)ソ(1oct上)ドレミ(ファ)ソ ★左手と右手で異なるリズムを弾く(左手は単音の伴奏) 8.よりも左手は細かいリズムを奏する。 |
10 | 入門2 | |
使用音:(中央)ソ(1oct上)ドレミファソ ★左手と右手で異なるリズムを弾く(左手は単音の伴奏) |
11 | 入門1 | |
使用音:(中央)ミファソ(1oct上)ドレミ 両手で6度離れた音を演奏するが、両手のリズムは終始一致している。跳躍/順次進行か、上行/下行か、音符の流れを音形で視覚的に捉える練習をする。 |
【付録】
月の光に〜子守歌、グリーンスリーブスは伊藤康英の編曲。