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> 平均律クラヴィーア曲集 第1巻
概要 |
“意欲旺盛な音楽青年に役立ち、この道においてすでに能力のある人のための特別な楽しみに供されるよう。” – ヨハン・セバスティアン・バッハ 全ての長調と短調による24の前奏曲とフーガからなっている。バッハがケーテンの楽長時代最後の年である1722年にまとめられた。バッハの教育用作品として規模が大きく、ピアノ学習者であれば必ず通る道であろう。 法則に縛られた学習フーガの形式を超えて芸術的につくられた曲の数々は後世の作曲家たちにも多大な影響を与え、ショパンやショスタコーヴィチなど……挙げ始めたらきりがないほど……偉大なる作曲家たちも24の前奏曲(とフーガ)を残している。 |
おすすめ作品 |
♪第13番 嬰ヘ長調 BWV858 |
コラム – 「平均律」という言葉について
ところで「平均律」と日本語では称されるが原題を直訳すると「Wohltemperierte Clavier(独)=よく調律された」という日本語になる。バッハの生きた時代では、純正律などまだまだ現代とは違った方法での調律方法が主流だった。特定の音(例えば5度や3度)で完全に美しく響く調律方法である。だがその方法では特定の調ではよく響いても、別の調ではうまく響かない、ということが起こる。そこで17世紀の終わり頃、A.ヴェルクマイスター(A.Werckmeister 1645-1706)によって新しい調弦法が考え出された。現代でもその基本は通用する、オクターヴを12の等しい半音に分割する方法=平均律 に近い調律法だ。現代の平均律はオクターヴ以外の全ての音程はほんの少し不純な響きとなってしまうが、その不純さを満遍なく調整することでどの音程もそれなりによく響き合い、あらゆる調での演奏、転調が可能になった。真に純正な響きは失われたが、作曲方法、表現方法の拡大、実用性を考えると大きな発明だった。
バッハの言う「よく調律された」というのは結局どの音律なのか、ということは熱く議論されているようで、演奏者・音楽学者・調律技術者の関心が高い議題となっている。「よく調律された」というのは必ずしも平均律を指すとは限らないのだが(誤訳、とまで言われる始末。私は誤訳と言い切ることはできないと思う)、その先進的な方法を応用してまとめ上げられたこの壮大な曲集は、紛れもなく全ての調を奏することのできる革新的な作品であり、平均律で調律された楽器でこそ実用的に演奏することができる作品なのである。古典的な音律で調律された楽器でももちろん演奏可能で、平均律にはない美しい響きを得られるが、曲ごとに調律をしなければならない。
私はここで「平均律か、そうじゃないのか」などという議論をする気はない。古典音律が使用されていた時代に、全調を使った曲集を作るなどという意欲的なこの作品を、当時と異なる音律の楽器を用いて、楽しみ、習い、300年も経った今なお新鮮な学びがあるという事実こそが重要である。……バッハはあらゆる音律を想定しているかもしれませんよ。
音律により表現が変わってくるじゃないか!平均律の音って汚い!というご意見もあるようですが、個人的なのバッハ演奏の方針は「現代(その時その時)の楽器で美しく」です。今ある楽器、自分の使用する楽器で美しく。それが素晴らしい古典を未来へ伝える手段だと思っています。曲の分析を通して音律を想定する研究などもあるので、また別の機会に話しましょう!
曲名 | 難易度 〈A/B〉 A=前奏曲 B=フーガ | YouTube 〈A/B〉 A=前奏曲 B=フーガ |
曲説明・解説・コメント・練習のポイント など |
第1番 ハ長調 BWV846 | ||
第2番 ハ短調 BWV847 | ||
第3番 嬰ハ長調 BWV848 | ||
第4番 嬰ハ短調 BWV849 | ||
第5番 ニ長調 BWV850 | ||
第6番 ニ短調 BWV851 | ||
第7番 変ホ長調 BWV852 | ||
第8番 変ホ短調(嬰ニ短調) BWV853 | ||
第9番 ホ長調 BWV854 | ||
第10番 ホ短調 BWV855 | ||
第11番 ヘ長調 BWV856 | ||
第12番 ヘ短調 BWV857 | ||
第13番 嬰ヘ長調 BWV858 | ||
第14番 嬰へ短調 BWV859 | ||
第15番 ト長調 BWV860 | ||
第16番 ト短調 BWV861 | ||
第17番 変イ長調 BWV862 | ||
第18番 嬰ト短調 BWV863 | ||
第19番 イ長調 BWV864 | ||
第20番 イ短調 BWV865 | 中級1/ | ♫/ |
〈前奏曲〉 簡潔に書かれており、複雑さのない曲。この単純明快さとリズムの小気味よさが気に入っている。8分音符はスタッカートで奏すると良い。緊張感が張り詰めていて少し鼓動が速くなっている、そんな曲だと思う。[13]から一旦ハ長調になるとき緊張を解いて弾く。タッチを変えるなど工夫を。[26]のオルガン・ポイントのA音はよく響かせて。オルガン・ポイントがあると一気にオルガン曲っぽくなるというか、教会を感じられるというか。バロック「らしい」曲だなぁと感じるので好きですね。 |
第21番 変ロ長調 BWV866 | ||
第22番 変ロ短調 BWV867 | ||
第23番 ロ長調 BWV868 | ||
第24番 ロ短調 BWV869 | ||